友達に頼みごとをするとき、家族に注意するとき、職場で何かを断るとき。言葉ひとつで、相手の受け取り方は意外と変わります。
きれいな言葉遣いというと、正しい敬語や丁寧な話し方を思い浮かべるかもしれません。でも、本当に大切なのは、難しい言葉を知っていることではないように思います。相手やその場に合わせて、どう伝えるかを少し考えること。今回は、毎日の会話の中で意識したい「言葉の選び方」について考えてみます。
敬語を話すことが、きれいな言葉遣いとは限らない
正しい敬語を使えることは、もちろん大切です。ただ、敬語が完璧なら、必ずしも感じのいい話し方になるとは限りません。反対に、少しくだけた話し方でも、一緒にいると安心できる人もいます。その違いは、使っている言葉そのものより、「この人にはどう伝えるといいだろう」と考えているかどうかにもあるのではないでしょうか。
仕事では丁寧に、親しい友人には少しくだけて。家族には家族なりの言葉があり、初対面の人にはそれに合った距離感があります。きれいな言葉遣いとは、決められた言葉を正しく使うことだけではなく、相手やその場に合わせて言葉を選ぶこと。そんなふうに考えると、少し身近なものに感じられます。
感情のまま言葉にする前に、少しだけ間を置いてみよう
忙しいときや疲れているときは、普段なら気にならないことにもイライラしてしまいます。そんなとき、「これやっといて」「なんでまだできてないの?」と、思ったことをそのまま口にしてしまうこともあります。もちろん、急いでいることや困っていることを伝えるのは悪いことではありません。ただ、「早くしてください」と言う代わりに、「急ぎで申し訳ないのですが、○時までにお願いできますか」と伝えるだけで、受け取る側の印象は変わります。
大切なのは、いつでも優しく話すことではありません。感情がそのまま言葉になりそうなときに、一度だけ間を置いてみること。「今の言い方で、本当に伝えたいことが伝わるかな」と考えるだけでも、余計なひと言を減らせます。「ありがとう」「助かります」「お願いします」といった短い言葉も、思っている以上に人との関係をやわらかくしてくれます。

我慢して合わせることが、すべてではない
言葉を選ぶというと、相手に合わせて我慢することだと思う人もいるかもしれません。でも、何でも受け入れて黙っていることと、相手を尊重しながら自分の意見を伝えることは別のものです。
たとえば、無理な頼みごとをされたとき、「大丈夫です」と言って引き受けるのではなく、「今回は難しいのですが、○日ならできます」と伝える。嫌なことがあったときも、感情的に責めるのではなく、「その言い方をされると、少し悲しく感じます」と自分の気持ちを伝えることができます。これは、相手を否定するのではなく、自分の気持ちや考えも大切にしながら伝える方法です。いわゆるアサーティブコミュニケーションにも通じる考え方ですが、難しい技術として覚える必要はありません。
言いにくいことを、言いにくいまま黙っておく必要はない。相手への配慮を残しながら、自分の考えもきちんと言葉にする。そのバランスが、人との関係では大切なのだと思います。
同じ内容でも、言い方で伝わり方は変わる
たとえば、相手に急ぎでお願いしたいことがあるとします。「早くしてください」と言うのと、「急ぎで申し訳ないのですが、○時までにお願いできますか」と伝えるのでは、受ける印象がかなり違います。伝えたい内容は、どちらも「○時までにお願いしたい」ということ。そこに「急ぎで申し訳ない」というひと言を加え、お願いする形にするだけで、相手を急かすだけの言葉ではなくなります。いつでも長く丁寧に話す必要はありません。語尾や言葉の順番を少し工夫するだけでも十分です。「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」を意識すると、会話の小さな行き違いも減らしやすくなります。
親しい相手にも、言葉を惜しまない
家族や長く付き合っている友人には、つい言葉が雑になってしまうことがあります。「言わなくても分かるだろう」と思って、お願いするときも、感謝するときも、言葉を省いてしまう。でも、親しいことと雑に扱っていいことは同じではありません。むしろ、日常的に一緒にいる相手ほど、「ありがとう」「お願い」「助かったよ」といった短い言葉をきちんと伝えることが大切なのかもしれません。特別なことをする必要はありません。いつもの会話に、ひと言足すだけ。その小さな積み重ねが、長く続く関係の空気をつくっていきます。

言葉を選ぶことから、少しずつ変えていく
言葉を選ぶことは、自分を消すことでも、誰にでも好かれる話し方を身につけることでもありません。自分の気持ちを大切にしながら、相手にも伝わりやすい言葉を選ぶ。それだけでも、人との会話は少し変わっていきます。そして、人との関係をつくっているのは、言葉だけではありません。話を聞く姿勢や声のトーン、表情、伝えるタイミング、相手との距離の取り方。同じ言葉でも、こうした「言葉の周りにあるもの」によって、伝わり方は変わってきます。言葉を選ぶことを意識したら、その次は、言葉の先にある自分自身の振る舞いにも目を向けてみたいところです。


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